弁護士山本了宣の研究日誌

活動の記録と、日々考えたことなどを書きます。技術的な話が多いかもしれません。研修などでは言いたいことをだいぶ削っていますので、そのぶんの話なども。

TKC証拠開示セミナーの講師をさせていただきました

先日、株式会社TKCの証拠開示セミナーの講師を担当させていただきました。

http://www.tkc.jp/law/lawlibrary/seminar/sem201608

 

日時:2016年8月4日、9月8日

テーマ:証拠開示の方法論
時間:100分
参加者:申込みは各100名でした。

 

2回目のアンケートでは、5段階評価で5(とても参考になった)をつけてくださった方が80%でした。幸いご好評をいただいたようでした。

 


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この講義の成り立ちを少しご紹介しておきます。証拠開示の方法論と銘打っていますが、文字通り方法論の講義です。

証拠開示はもともと私自身が悩みを持っていました。
証拠開示というのは難しいのです。検察官が持っている証拠は見えないのに、「○○を開示せよ」という風にこちらから特定をしなければならないというのが1点です。もう一つは、証拠開示には、ある種の完璧さが求められることです。「7割方開示を受けたからまあ大丈夫でしょう」ということにはならないのです。人間社会では大事な情報はあちこちに書いていることが多いですが、決定的な無罪の証拠はあちこちに書いていません。たった一つだったりします。それを拾い残すことが許されないというのが完璧主義的ということです。

しかし悲しくも、私は完璧からほど遠い証拠開示を何回かやりました。弁護士になってから2年ほどの期間です。

 

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もどかしさを感じながらなんとかしたいと思っていた弁護士2年目の秋、よいことが起きました。閃いたのです。

私はそのころ、事実とはなんだろうかということについてよく考えており、事実は人・場所・物の化合物であるという考えを持っていました。
証拠というものは、事実の痕跡です。証拠が事実から生まれるのであれば、原理的に考えて証拠は人・場所・物のどれかに必ずつながっているのではないか? 証拠を見つける作業も、特定する作業も、人・場所・物につなげることで可能になるのでは? 

これが閃きの内容です。閃きにしたがって、手元でちょこちょこと試作してみました。どうやら、うまくいく気がしました。
実際の事件でも実践し、うまくいきました。1、2年目の悩みはどこへやらです。


その内容を、同じ秋の弁護士会の研修で講義させてもらったところ、好評をいただきました。それから毎年1~2回、20分ほどの時間で、弁護士会の研修で講義をさせてもらうようになりました。
毎回同じことをしゃべるのは嫌なので、毎年ちょっとずつバージョンアップしていきました。個人的に私が取り組んでいる行政文書開示請求の成果なども組み合わせて、だんだん充実度が増してきました。

しかし、バージョンアップの宿命なのでしょうね。だんだんごちゃごちゃしてきたのです。情報が増えたはよいものの、初期のすっきりさが失われている気がしてきました。
そこで思いきって大改造に乗り出すことにしました。体系全体を一から整理し直すことにし、要素を全て並び替え、本質的でないものをそぎ落としました。更にちょっとしたデザインの本も買ってきて、スライドも一新しました。
こうして5年の手垢のついた講義も生まれ変わりました。

 

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前置きが長くなりましたが、ようやくTKCセミナーにたどりつきます。ちょっとした機会に上記の一新版を披露させていただいたところ、内容が充実しているということで、講師をさせていただけることになったのです。

問題は、時間が100分だということでした。今までせいぜい30分でやっていたので、内容が足りません。ここで大改造第2段を行うことになりました。講義の範囲を、証拠開示通知への対応なども含めた広いものにし、更に実例を豊富に盛り込むことにしました。結果的には、普通にゆっくりしゃべると3時間近くかかるものになってしまいました。大事なところをゆっくり、大事ではないところを手早くということで、どうにか100分におさめているようなところです。これが現在のものになっています。

 

昔話で恐縮ですが、成り立ちをご紹介させてもらいました。